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学部生が英語で論文を執筆して採択されるまでの経緯

2020年度のゼミ生が取り組んだ卒業研究が、国際誌にアクセプトされ、出版されました。


学部生が国際誌のアクセプトまでたどり着くのは、おそらく稀な事例だと思います。

これは学生にとっての成功体験であると同時に、指導した私にとっても良い経験になったので、経緯をまとめておきたいと思います。


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雑誌名:Int J Environ Res Public Health


論文タイトル:

Association between Physical Frailty Subdomains and Oral Frailty in Community-Dwelling Older Adults


こちらから全文にアクセス可↓

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2020年度は新型コロナウイルスの影響で、学生の実習期間を短縮せざるを得ない状況になりました。

ゼミ学生と話し合い、その分を補う意味でも新たなことにチャレンジしようということで、研究や社会活動に力を入れることになりました。


          社会活動として作成した運動のパンフレット



      買い物袋で筋トレ出来るのでは?と学生より(無事、却下になりました)      



3年生の3月ごろには、概ね研究テーマを決めていたので、その時期から検索式をブラッシュアップして、論文を網羅的に収集して関連文献を読んでいく作業を進めました。

最終的に包含された論文が200件超ありましたが、学生はそれら全てに目を通していました。

あとから学生から聞いた話ですが、実習期間中も、土日に少しづつ文献を読み進めていたようです。(よほど論文を読むのが好きでない限り、あまりオススメはしません)



ここまでいくと、学生の方が私よりも知識を蓄えているので、私が知らないことを質問すると、学生が答えてくれる状態になりました。

ここまで分かってるけど、ここからは分かってない、という点がだいたい区別できていたので、これは任せて大丈夫だなという感触がありました。



今回の研究は歯科口腔外科の共同研究ということもあり、新潟大学の歯科の長谷川陽子先生に全面的にバックアップ頂きました。

データについては、学生とともにこれまで蓄積してきたものを使用しました。

8月頃から何度もオンラインで指導を受けながら、解析データをまとめていきました。

先生方とのやり取りの中で、自然と「英語で論文をまとめましょう」となりました。

当初、学生は躊躇していたようですが、とりあえずやってみよう、ということになりました。

(ここだけの話、私の中では4月の段階で英語で書いてもらうことを決めていました。)



9月頃には概ねデータの解析が終わったので、老年医学会近畿地方会、サルコペニアフレイル学会で発表し、11月頃から論文の執筆が始まりました。



             老年医学会近畿地方大会での様子           



通常であれば12月頃からは国家試験の勉強が忙しくなる時期です。

そのため、学生とは4月の段階で、「12月までに国家試験を余裕をもって合格できるレベルにもっていこう」と話していました。(実際にそこまで持っていけたかどうかは別の話ですが、各々がそれに向けて時間を見つけてコツコツ取り組んでいたように思います)



英語で書く前段階として学生にはこちらの資料を読んでもらいました。


<JEMNet論文マニュアル第2版>



初めて論文を書く際の注意点や、論文完成までのロードマップが非常に詳細に書かれていて、素晴らしい資料だと思います。(これが無料とは驚き!)

読んでるだけで、「自分にもできそう」と思えてくるのがイケてるポイントです。



他にも執筆に役に立つ本などは学生が自由に使える本棚においておきました。

意外にそれらの本にも興味があったようで、学生はちょこちょこ目を通していました。


英語で論文を書く前に、論文の文章構造(アウトライン)を日本語でまとめていきました。

ここを何度もやり取りして、ロジックを固めていきました。



ある程度構造ができあがったら、それに肉付けしていく作業を進めました。

方法や結果は、先行研究を参考にしながらダイレクトに英語で書いていきました。

イントロと考察は、初めてなので、日本語でしっかりした文章を考えてから英語にしていくように伝えました。



学部生なので「翻訳サイトつかってもいいよ」と学生には伝えていたんですが、そのまま翻訳に頼ることはせず、英作文を熱心に取り組んでいました。

11月~12月頃は、私の部屋の前で毎日のように英語でブツブツ言いながら、あーでもないこーでもないと学生同士言い合って執筆を進めていました。

指導していて、彼らの英語力が短期間でグイグイ向上していくのを感じました。


                執筆の様子



英語で執筆するにあたり学生に紹介したツールが3つあります。

いずれも有名なのでご存じの方も多いと思います。

 

DeepL 


Grammarly


Zotero


DeepLはAI技術により高い精度で翻訳してくれます。無料版で大丈夫です。

わかりやすい日本語を書けば、きれいな英語の文章を作ってくれます。

私も英語が得意ではないので、フレーズがパッと浮かばない場合は、その機能を使うことがあります。

普段は、作成した英文が正しい日本語に翻訳をされるかを確認するために使うことが多いかなと思います。

学生もその流れで使用していました。


Grammarlyは文法のチェックに使えます。

無料でも十分使えます。

これを使うと、圧倒的安心感があるので、ノンネイティブには必須だと思います。

(細かい文法を身につけるのがなかなか難しいので)


Zoteroは参考文献を作成してくれるソフトです。

無料なので助かります。



何度もやり取りしながら、少しずつ進めていきました。

当初、投稿先は別の雑誌を考えていまいたが、偶然にもInt J Environ Res Public Healthにオーラルフレイルの特集が組まれるとの情報が入り、そちらに切り替えることにしました。

最初は在学中にアクセプトまでもっていくことは考えていませんでしたが、

オープンジャーナルの特性からもしかしたらいけるかも、という話になり、

3月中にアクセプトを目指すことにしました。



そうするうちに年が明け、国家試験を意識せざるを得ない時期になりました。

このあたりからは、国試の成績の良い学生が、調子の悪い学生をカバーするような形で、

助け合いながら執筆していました。

1月末には概ね完成し、他の共著者の先生方にアドバイスを貰いつつ、校正にかけました。


国家試験本番が2月末なので、その2月中旬からは勉強に集中しよう、ということを学生と決めました。

在学中にアクセプトまでもっていくためには、国家試験終了直後に最初の査読結果が帰ってくるのが理想だったたので、逆算して論文を投稿することになりました。


運良くその作戦がはまり、国家試験終了の2日後にMajor Revisionで帰ってきました。

再投稿までに猶予が1週間しかなかったため(かなりえげつないスケジュールなので自分でこの雑誌に投稿する勇気はないかも・・・)、

4日間で修正し、その後校正にかけて、再投稿しました。

かなりの大幅改定だったので、この4日間は学生はほとんど寝られなかったのではと思います。


その後もう一度Minor Revisionがありましたが、無事に採択が決まりました。

卒業式直前だったので、一応、在学中に滑り込みました。



今回の取り組みは、大学の広報が取材してくださいました(Zoomにて)。

大学広報の記事はこちら↓

                Zoomでの取材の様子



取材の際に学生からは、

「最初は出来ると思ってなかったけど、チャレンジしてみれば何事も道は開けると感じました。今後も挑戦することを続けていきたいと思います」

というコメントがありました。


正直、そう思ってもらえただけで、今回の取り組みをした価値があるのかなと思います(論文が採択されるとか関係なく)。

指導者として一緒に並走させてもらえたことを、とても嬉しく思います。



学生の頃の私では、彼らのようにできなかったと思います。

やる気とポテンシャルがある学生には、こちらが勝手に限界を決めずに、もっといろいろチャレンジできるような支援をしていかないとなと、今回の経験を通して改めて感じました。

今回はそれが論文でしたが、それは何でもいいと思います。



学生の取り組みを通して、私自身、多くのことを学ぶ経験となりました。



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